麻美ちゃんと透君は、今日からこの家に下宿することになります。
赤い羽目板の古そうなこのお家。
「こんばんわ……。いらっしゃい」
このおばあさんが一人暮らしをしているのです。
食堂には二枚の写真。
二人の老女と老人が写ったものと、老人老女にteenの男の子の三人が写ったもの。
コッチコッチ……。
……。
「この家、虫が多くてね。あの茶色くてかさかさ動く奴……」
「はあ」
おばあさんはエルヤさんという名前で、この家に住んで長いようです。
「先日、母と夫を亡くしましてね。末の息子も大学に行ってしまって、寂しくしていたところなの……。あなた達が来てくれて、この広い家も賑やかになったらうれしいわ……」
「ねぇ、透。この家あれも出そうだね……。足がなくってふわふわ浮いている奴」
「しっ! ねえちゃん失礼だって」
さっそく自分たちの部屋を確認する麻美ちゃん達。
お部屋を見回していると……。
音もなくロココ調の人が戸口に立って、じっとこちらを見ていました。
(きゃ! やっぱり出た~!!)
……と思ったら、生身の人間でした。
「僕はエルヤの年の離れた弟なんです。……あの、姉と仲良くしてやってくださいね。変わり者だけど、根は優しい人なんです」
「こちらこそ、今日から色々お世話になりますわ」
しばし世間話ですが、ここは色々とあった家のようです。
(いなかだから、夜となると、本当に静かだな……)
透君、部屋に落ち着くなり早速仕事探しです。
さいわいすぐに専門医の仕事も見つかって、明日から早速出勤です。
がつがつ。
(この家出るわ。絶対、あれが出るわ……!)
麻美ちゃん、どうにも落ち着きません。
寝る前に、麻美ちゃんは透君と枕たたきで遊びました。
「ねえ透。今晩私の部屋に泊まらない?」
「なんだ、一人で寝るのが恐いんだろ。ねえちゃんいくつだよ」
ばふばふ。
「あいたー! じょ、冗談に決まってるでしょー……!?」
こうして、麻美ちゃん達の新しい生活が始まるのでした。
(あー……。やっぱり一人はこわいよう……)
幸いにして、この日の晩は、お化けもゴキブリも出ず、平和に更けていったのでした。
新しい生活が今日から始まります。
麻美ちゃんは古新聞のリサイクル。
透君は植木の刈り込みで、家の前をきれいに掃除します。
大家さんの旦那さんが亡くなってから、伸び放題荒れ放題になっていたようですね。
お墓の周りのひなげしにも水やり。
一仕事終えて、透君は病院へ出勤です。
「あー、僕うまくやっていけるかなー」
不安そうな顔をしています。
麻美ちゃんはシャワーを壊して、自主的に修理中。
「ついてないなーもう。これだから古い家は困るのよね」
ロマンス願望の麻美ちゃん。
早速大学時代のお友達を呼びました。
「ひさしぶり! 来てくれて嬉しいわ」
早速ハートがきてます。
今日から仕事に恋に、いっぱい頑張るつもりの麻美ちゃん。
新生活に期待を膨らませて、思わず大胆に迫ってしまいます。
「それじゃあ、元気でね!」
「え、え? もう? さっき来たばかりじゃ……」
麻美ちゃん、この次はファルク君を呼ぶ予定なんですよ。
仕事がない今日と言う日を有効活用しなくっちゃ。
そして大家さん、どうやら麻美ちゃんの絵を描いてくれているようです。
今日は透君、手術セットで練習です。
人形のお腹を切って、中に手を突っ込みます。
さてさて、何が出てくるかな……。
チーズバーガーが出ました。
しかもダブルで。
さて、お次は……。
なにやら脈打つものが出ましたよ!
そして緊急ランプが点灯!
えまーじぇんしー、心肺停止!!
あわてて中に戻す透君。
つか、手遅れじゃないですか?
人工蘇生を試みます。
まずは人工呼吸。
そして心肺蘇生。
透君、必死な顔をしています。
でも、緊急ランプはまだ消えません。
「あーもうっ! 起きてよ~」
ゆ、揺すり始めましたよ!
だめじゃん!
「いーきーかーえーれー!」
しまいには胸を叩きはじめました。
滅茶苦茶ですが、これで緊急ランプが消えました。蘇生成功?
ウソみたい……。
気を取り直して、また中から取り出します。
と、透君それ何?
気味の悪いものが出てきました。後ろにポイします。
「これで終わり」
チクチクとお腹を縫い合わせました。
さっき後ろに捨てたもの、入れなおさなくいいんでしょうか……。臓器っぽかったけど。
「手術成功です」
う、うそだ。
そしてまたしても、手術再開!
こんどは中から電話の子機が出てきたっす!
これには透君も驚きですか。
慌てて中に戻します……。
って、戻すもんじゃないだろ、それは!
さらに次は、チャッカマンが出てきました。
透君、これは後ろにポイしました。
次は殺虫スプレーが出てきました。
驚いてます。
が、どうも後ろにポイするものと慌ててお腹の中に戻すものとの判断の基準がいまいち分かりませぬ。
それにしても、四次元ポケットみたいなお腹ですね。
いろんな物が出てきて、見ててあきないです。
今度は何が出てきたんですか?
ジャガイモ?
「どーしよー。こんなのでてきたよー」
お墓の隣で手術練習をする透君でした。
おわり。
ある晩のこと。
いきなりですが、出ました。
透君!
ほらほら幽霊だよ! 願望に「幽霊を見る」があったでしょ!
「ん? なんか今からだの中を何かが透き通っていたような……」
透君、気がつきません。
「あれ、椅子が浮いてる……?」
透君、鈍すぎ。
「疲れてるのかな。今日は早めに寝ようかな」
透君、だから幽霊なんだってば!
プレイヤーだけが騒いでます。
誰も入っていないはずのお風呂があわ立ったりと、怪奇現象が続発しているというのに……。
透君、君、幽霊見たいんじゃなかったの?
「わ!! やっぱり浮いてる!?」
気づくの遅すぎ。
「やっぱり疲れてるんだ。早く寝ちゃおう……」
その晩、透君は怪奇現象に囲まれながらもついに幽霊を見ることはありませんでした。
霊感はあるのに、神経が鈍すぎて気がつかないという幸せなタイプのシムのようですね……。
一方の麻美ちゃん。
翌日には、またしても大学生の彼氏を招待していました。
麻美ちゃんも、ロマンス願望シムらしく、これからどんどん男の子を口説いていくつもりです。
が、ウフフを拒否られ麻美ちゃん情けないお顔。
二度目のトライで何とか2ウフフ完了です。1ウフフは弘君でしたね。
弘君に比べたら、麻美ちゃんまだまだ修行の足りないロマンス願望シム。
悠子ママには遠く及ばないとしても、弘君には対等に自慢できるくらいにはなりたい麻美ちゃんでした。
それにしても、透君が幽霊に会えなかったのがなんとも残念。
「姉ちゃんさぁ、最近よく食べるようになってない?」
「ふえ? 気のせいなんじゃない? がつがつ」
その時、台所に立っていた大家さんが火事を出しました!
「うわー! 燃えてるー!」
果敢に炎へ立ち向かう消防士さんの隣で、慌てる透君。
大家さんはさっさと避難してしまいました。
やっと火が消えたと思ったら、今度は麻美ちゃんが火を出しました!
火事多いな!
「すすすすすみません! さっきの消防士の人、まだ近くにいます!?」
慌てて消防に連絡をする麻美ちゃん。
まさか2連続で火事が出るなんて思いもよらず、透君はのんびり時計のネジなんぞを巻いています。
麻美ちゃんも、仕事で出かけて行きました。
火がまだ燃えてます……。
「何でこの家留守なんだよ! 火事出したのに、おかしいって!!」
消防士さんごめんなさい……。ご苦労さまでっす。
「やだあ、ホットケーキ焦がしたのだ~れ~?」
二階でお風呂に入っていた大家さんが台所に戻るころには、火事も消防士さんもきれいさっぱりいなくなっていましたとさ。
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